田原坂小唄
歴史音痴の晧三が兄の隆之輔の伝言を整理し始めた。
一応隆之輔の伝言と題したものの、手がかりになる
ものは簡単な紙切れのメモのような物ばかりだ。
それらメモを時系列に並べて見ると、どうしても歴
史感覚に目覚めて来るものだ。
隆之輔は美術史を専攻しているの「隆之輔の伝言」
出て来るテーマはどうしても欧米の美術史に関連
する傾向があるが、主流を成すものは父の栄と同じ
鹿児島の田中省三の話が多い。
する
歴史にはあまり関心がないのだが、倅の正晃も家内
の玲子も、司馬遼太郎の本を読む事が多く、彼らとの
日常の話題も戦国時代から幕末、明治時代の登場人物
について、愉快そうに、面白そうに話すので、晧三も
読んだり、調べたりするようになった。
隆之輔が送って来た資料の中で、多いのはやはり鹿児島
の明治の田中省三の事なので、思い切って西南戦争に
照準を合わせ司馬遼太郎の大作、「とぶがごとく」を
読んだ。司馬遼太郎は日付、時間、場所に至るまで、
史実が記述されているので、地図と年表を傍らに置き
読んで見た。こんな作業をしながら、「田原坂の戦い」
の義勇兵として参加して田中省三を浮彫にして見よう
と思った。
隆之輔も栄もアルコールが入ってほろ酔い加減に達する
と「田原坂小唄」良く歌ったものだ。
「雨は降る降る人馬は濡れる越すに越されぬ田原坂」
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