晧三は三河犬をこよなく愛した

耳が立って、尻尾がクルッと巻いた赤毛の犬、 秋田犬と柴犬の中間の中型の三河犬、いかに も精悍そのものだった。 子犬の頃夕方散歩に連れ出すと月を見ると悲し そうに吠え、尻尾を股の間に入れた。寂しい そうな声をだすので、この臆病者と叱った事 が良くあった。 近所に大型のシェパードが居た。この犬が放し 飼いにされ、人を噛んだりして怖れられていた。 その頃、今のようなペットブームは無く、家の 中で飼うのはスピッツ位だった。 三河犬が成犬になった頃、このシェパードと鉢 合わせとなった。三河犬は2倍以上もあるシェパ ードに猛然と飛びかかり一瞬にして喉を噛んで しまった。 かなり高い石垣の上の広場から、多分1メートル はあったかと思われる高台からシェパードはピョ ーンと軽々飛び越え逃げて行った。三河犬も後を 追ったが、道路に胴体着陸した。如何にも痛そう だった。 耳を後にして、恥ずかしそうに、目を細め、私 の両腕に飛び込んで来た。両手で太い首を抱え 頬ずりをしてやった。日本犬は洋犬には強いと と言う事を後で知った。 薬など無かった時代。わずか5年で死んでしま った。血統書付きの三河犬太郎だった。希望が 丘の墓地に入れて上げた。 

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